映画「ソーシャルネットワーク」レビュー そしてその隠されたテーマとは



こんにちは @tokunoribenです。

映画「ソーシャルネットワーク」いよいよ上映が開始されましたね。
すでにアカデミー賞の前哨戦となるゴールデングローブ賞で四冠に輝くなど、その映画としての評価は高まるばかりです。



facebookを普段から使ってるようなハイソなお友達はすでに試写会で見られたと思いますが、


映画館、そしてブルーレイでも見るだけの価値がこの映画にはあります。


そしてタイトルにもあげたようにこの映画はある一つの重要なテーマを背後に隠しています。


このテーマに気づくか気づかないか映画を見てみるとまた違ったものがみえてくると思います。

さっそくレビューして行きましょう。


ネタバレ注意、と言いたいところですがすでに映画に出てくるfacebookというサービスが今結果として地球上で5億人もの人が登録しているソーシャルネットワークとして存在するという燦々たる真実がありますのでネタバレも何もありませんね。あなたのモニターの前にあるそれが全ての真実です。なので、「ソーシャルネットワーク?facebook?なにそれ食えるの?アメリカのことなんておらなんもわかんね」 という情弱の皆様方のために、わかりやすく「facebookが日本で生まれてたら」、ということでレビューして見ましょう。


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2003年秋。の慶應義塾大学2年生の伊藤さんは駒沢大学生の恋人と口論になり、「アンタがモテないのは性格がサイテーだからよ」と言われて振られてしまいます。怒った伊藤さんは酔った勢いも手伝って当時流行っていたブログや2chに彼女の悪口を書き並べていました。そのうち、「うちの大学のリア充爆発しろ!」ということで慶應義塾大のコンピュータをハッキングして女子大生の写真を集め、寮の友達の増田さんの協力の下で女の子の顔の格付けサイト「女子大生顔写真比較サイト」を立ち上げました。「慶應義塾大学の女子大生がかわいい件」「ミス慶應にブラックメール送ろうぜwwww」などと2chネラーの間で祭りとなったこともあり、公開から2時間で2万2000アクセスを記録するに至りますが、4時間後には大学側に潰されてしまいます。後日、大学の理事会に呼び出しを食らった伊藤さんは半年の停学処分を受け、大学中の女子大生全員からキモがられてしまいました。そこへ、体育会のボート部に所属するリア充大学生である久野兄弟はオタクっぽい伊藤さんに目を付け、「名誉挽回のチャンス」と称し、「keio.jpドメイン」に群がる女と出会うことを目的とした慶應義塾大生専用のコミュニティサイト「慶應義塾大学生ねっと」の制作協力を依頼します。これにヒントを得た伊藤さんは寮の友達の増田さんを会計担当にして10万円貸してもらい同じくエンジニアの清水さん、千田さんと一緒に出会い系サイトの制作に取り掛かり、2004年初頭、ソーシャルネットワークサイト「nixi」が誕生します。そしてnixiはかつて怪しくも膨大なネットワークを持つ大畑さんの協力で資金を手に入れ六本木にオフィスを構え、あれよあれよと急成長をしていくものの。。。

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実にリアリティあるシンプルなレビューとなりました笑

上記は名前と大学名とサイト名くらいしかいじっていません。



「慶應生が女子大生にモテようとして慶應生限定の出会い系サイト作ってたらいつのまにか会員が5億人になっていたでござる。」



これのアメリカバージョンがfacebook、ただそれだけです。

モバイル環境やインフラ環境が世界の中でも普及し、関東を中心に大学生の50%以上が集中している日本という国においてこうしたソーシャルネットワーク的なビジネスが大学生から始まり広まっていく萌芽は充分にあったと思うのですが、

「今!女子大生と出会えるこのサイトが熱い!」などと裏モノなんたらなどのサブカル誌に取り上げられて、周囲も出会い系サイト同然に白い目でみてしまうような日本という国でその萌芽が刈り取られてしまい、みんなが必死になってあしあとを踏み合いっ子してるような変なサイトが残ってしまったのは実に心残りです。


こんなところに文化や国民性の違いを感じますね。


さてさて改めてみるとどこが楽しいのかまったくわからない映画なのですが、

そこは『セブン』『ファイトクラブ』『ベンジャミン・バトン』と数々の名作を世に送り出してきた稀代の名監督デビット・フィンチャー。

かつてファイト・クラブでブラッド・ピットのワイルドでファンキーな姿に圧倒され、タバコの吸殻を意味もなく地面に叩きつけたり、電球のヒモに向かって無意味にシャドーボクシングに打ち込んだりと中二病の過去をもつ私と同世代のお年頃の皆様はデビットフィンチャー監督の息をもつかぬスリル溢れる展開に引きこまれること間違いなしでしょう。ストーリーは決して面白いといえる話ではないだけに改めて映画監督の手腕が引き立ちます。



そしてさらに面白いことにこの映画『ソーシャルネットワーク』の原作は実は主人公ともいうべきマーク・ザッカーバーグには一切インタビューをしていません。冒頭のレビューにでてきた会計担当、すなわちfacebook共同ファウンダーであり初代CFOのエドゥアルド・サベリンの視点から書かれています。

歴史は常に勝者の視点からかかれる、とは人類有史以来のお決まりですが、

こうした企業の代表者の華々しい成功の影には同様に成功と引換に犠牲となって散っていった多数のパートナーの話が存在しています。

この映画はそんな消えていった立役者にスポットを当てた稀有な映画といえるでしょう。

さてさて、ここでこのエントリのタイトルにあげたようにこの映画の隠されたテーマについて話しましょう。

これから映画を見る人、そしてすでに映画を見た人に問いましょう。







「この映画で誰に最も心を動かされましたか?」








この映画の傍題は「天才、裏切り者、危ない奴、億万長者」で、マーク・ザッカーバーグが主人公のような書き方ですが


こうした奇人に振り回される周囲の人間模様の映画というのが正しい表現でしょう。


そして、そうした人間関係が利害関係と相まって血みどろな争いを繰り広げることになる「起業」の裏側を映しだす鏡といっても過言ではありません。

事実、この映画には起業において重要な役割を担う種類の人々が登場してきます。

圧倒的な行動力と周囲の目線を物ともしない創業者のマーク・ザッカーバーグ。

マークとルームメイトで創業にあたり自分の貯金を出資し、facebookが世にでるきっかけを作ったエドゥアルド・サベリン

マークのビジョンに陶酔し自身もプログラミングを習得しfacebookの基盤を作ったダスティン・モスコビッツ

facebookの可能性をいち早く見抜き、自身の多様な人間関係を駆使してfacebookをスターダムへのし上げるきっかけを作ったショーン・パーカー

アイディアはあったにも関わらず、自分たちで実行にできずマーク・ザッカーバーグにアイディアをぱくられてしまったキャメロン&タイラー・ウィンクルボス兄弟




先ほど聞いた、あなたが心を動かされた人物、それはまさに





起業におけるあなたのポジション





を示唆しています。




ちなみに私はエドゥアルド・サベリンでした。



華々しい企業の成功の裏側には、いるべきしてそこにいた人、そして運命のいたずらというかなぜかそこにいた人、というのが存在します。



僕はそんな彼のような運命に翻弄され「そこにいた人」に得も知れぬ共感を感じてしまうのです。




例えばこんな昔話はどうでしょうか?




facebookが世に出る30年前、


アメリカの西海岸にロン・ウェインという人物がいました。

ロンウェインと聞いてもほとんどの方はピンと来ないでしょう。事実彼は有名人でも何でもありません。

しかしながら、アップルの3人目の共同創業者、と言えば彼がどのような人間かわかってもらえるかもしれません。

「アップルの創業者はスティーブ・ジョブズとウォズニアックじゃなかったのか?」

と思われる方も多いと思います。

実はアップル社を創業するにあたって、アップルのロゴデザインを考え、アップルに出資しアップル社の株式の10%を持っていた3人目の創業者がいるのです。

「ええ?じゃあ彼はどうしたんだ?株式を売却して今頃億万長者のはずだろう?」



ええ。彼は、株式を売却しました。


800ドルで。



アップル社創業にあたりアタリ社でウォズニアックの同僚であったロンはジョブズとウォズニアックの会社設立にあたり私財を出資し株式の10%を譲り受けます。
しかしながらアップル社のコンピューター事業のリスクが高すぎることを懸念していた彼はApple1の売れ行きが不調なのを目の当たりにし、アップル社の会社登録の12日後に市役所を訪れ、共同経営から脱退する手続きを行い、彼が保有する10%の株を800ドルで会社に買い戻させました。


もし、ロンが株を売っていなかったら、彼は今頃220億ドルもの財を築いていたことになります。

彼の経歴や生い立ちにおいてはこのサイトに詳しくまとめられているので、興味がある方は見てみるといいかもしれません


映画「ソーシャルネットワーク」はスティーブ・ジョブズやスティーブ・ウォズニアックの視点ではなくロン・ウェインから書かれた物語といっても過言ではないでしょう。


原作が彼からのインタビューをもとに書かれていること、そしてfacebookをめぐる係争中の裁判で有利に展開するため、映画における彼の描写は創業者に裏切られた実に哀れでかわいそうなパートナーとして書かれています。


本心は彼のみぞ知るですが、ルームメイトのマーク・ザッカーバーグに頼まれ出資をしたものの、きっと心の奥底では
彼は本気で会社を成功させよう、とは思っておらず自らのキャリアに箔が付けばいいか、と会社ごっこの延長上に考えていたのではないでしょうか? 


かつてロンウェインがそうしたように。



そしてエドゥアルド・サベリンを待ち受ける結末とは・・・


おっと、この続きは映画で!笑




このエドゥアルド・サベリンがどこか自分の姿と重なって僕は先の問いにエドゥアルド・サベリンと答えました。



というのも僕はこの映画の試写会を、勉強会で主催しました。


この運営団体のメンバーや参加者には実に稀有なメンバーが揃っています。

今をときめく某モバゲ会社で働こうとするメンバーを中心にIT企業や広告代理店から商社まで

日本の未来を担う優秀な人材が集まり、イノベーションが生まれる環境がここにはあります。

冒頭のレビューはまさにその人間関係を反映した縮図とも言えるでしょう笑

はっきりと断言しますが、間違いなくこの勉強会を中心としたメンバーの中から日本の社会を変える将来の起業家が誕生します。

僕はこの団体の設立に関わっていました。団体名も代表と一緒に寝ないで考えたのはいい思い出です。


血気あふれるこのメンバーはこれから社会に出て未来への階段を登っていこうとしています。


しかしながら僕は、止まったままでいます。


成長の階段を全速力で登っていく周りのメンバーを見ながら、僕だけは階段の同じところでずっと止まったままです。


いずれ、この中の誰かがスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグのように会社を作り


「お前も手伝ってくれないか?」と言われたときに



僕の未来を待ち受けるのは


ロン・ウェインなのかかエドゥアルド・サベリンなのか―――それともまた別の結末なのか――











映画を観終わったときの得も知れない余韻に浸っているあなたへ










あなたはスティーブ・ジョブズにもマーク・ザッカーバーグにもなれません。




しかしながらロン・ウェインやエドゥアルド・サベリンになる可能性はあるかもしれません。




運命に翻弄され、「ただその場にいた人」、あるいは「その場にいるべくしていた人」になるのか。



それは神のみぞ知る、かもしれないし、自らの手で掴みとることができるのかもしれません。