読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゲームは僕たち子供が時代の進化を目の当たりにできる唯一の場所だった。

人生論

ハイスコアガールというマンガが面白い。

最近読んだマンガの中では一番ハマった。読み終わったマンガ読むなんて久しくしないけど、このマンガだけは何回も読んでる。

辛いときに何回も読んで、気分転換してる。ハマりすぎてブログに思いを書き出さなきゃ脳内メモリーを食うくらいだから。



あらすじはうまいこと説明できないけれど、本の副題には90年代アーケードラブコメディと書いてある。要はゲーム×青春のマンガだ。

ちなみに僕は世代が微妙に世代も違うし、アーケードやらなかったので出てくるゲームの元ネタほとんどがわからない。

でも、それでもめちゃくちゃドはまりしてるので、ジャストフィットする世代で元ネタもわかってたら刺さりすぎて脳溶けると思う。

なんせ、この作者、押切さんのマンガは「目」の描き方がとっても素敵。デロデロの時から大好きだった。サイトーさんかわいいよ。サイトーさん。

ちなみに出てくるヒロインの片方は一言もしゃべらない。しゃべってるのかもしれないけど、マンガの中にはそういう描写はない。

でもそれを補って上回るほどの緻密な心理描写が「目」だけで完結してる。こんなに切ないくらいに人の感情を目だけで伝えられる描き方って本当にすごい。

目ってこんなに感情を表せるものなんだって。感動する。

例えばこのカット。


これはまたもう1人のヒロインで、セリフを削ったけど、もうこれが、どういうシーンでどんな感情を互いに抱いてるのか、一発でわかってしまう。

このときの少女の少年に対する気持ちを答えよとか現代文の設問で出てきたら満点取れちゃう。

こんなに切ない感情を「目」だけで描ける、ってほんとにひとつの才能だと思う。

思ったんだけど、これってマンガならではの表現なんだよな。

実際に実写だと、目なんてアップしたところで感情を表現するなんてできない。

アニメでは、おなじカットを再現できるけれど、この目のアップをどのシーンのあとに何秒写して、瞬きのペースはどれくらいかで全然意味も変わってくる。

一瞬一瞬の顔のパーツのアップと構成だけで、読者に感情を想起させられるってマンガしかできない表現技法だと思うんだよね。





あともちろんストーリーのデキも素晴らしい。

小学生時代から高校生時代まで、主人公らの時代背景の変化と一緒に、ゲームもうつりかわっていくんだけど、それがまた脳髄にくるよね。

主人公のハルオが言うんだ。

「バーチャファイター2の導入日にな・・・ちょっと息抜きに様子だけ見に行ったんだよ・・・本当に圧巻だった・・・しばらくゲーセンから離れてたから・・・なめらかな人物の動きと移動する背景にくらくらきたよ・・・・あれぞ格ゲー界の・・・いや、ゲーム界の革命だった・・・3Dに負けじと2Dもすさまじかった。進化し続けていてこれからついていけんのか不安になるくらいな・・・俺たちゲーマーにとって脳がとろける進化だ・・・俺たち子供が時代の変化を目の当たりにできる場所ってのはゲーセンじゃねーのかって俺は感じたぜ・・・」



僕はハイスコアガールの主人公とは微妙に世代が違っていて、RPGは好きだったけど、格ゲーとか全然わからないし、ゲーセンにもいかないタイプだったからから、出てくるキャラクターやゲームはほとんどわからないんだけれど、それでも、確かにゲームは僕たち子供が時代の進化を目の当たりにできる唯一の場所だったのは間違いないんだ。


ドラクエ?であの効果音とともに「お気の毒ですがぼうけんのしょ1は消えてしまいました」っていうメッセージを見たときはこの世の終わりだと思ったし、

ドラクエ?ではぬわーっ言うてパパスが死んだとき号泣したし、

ファイナルファタジー7のオープニングのムービーを見て、時代の進化に息を飲んだし、

ゲームを親に隠されたり、友達に貸したゲームがかえって来なかったり、お年玉を貯めてゲームを買ったり、

ふりかえるとあのひとつひとつが僕の人生だった。

あれからもう10年以上の時間が流れたっけ。


時代は変わった。

今は、お年玉では買えなかったゲームも、好きなだけ買える。

夜2時までゲームをやっても、小言を言うオカンもいない。

そう、いつでも好きなだけ自由にできる。


でも、できなくなった。楽しくなくなった。


あの頃の俺はお金と時間さえあれば、ゲームがずっと楽しめると思ってた。

親が寝静まった深夜にこっそりゲームの電源を入れて、このままの時間が永遠に続けばいいのにと思った。

バイト代を貯めて、店頭で悩んで悩んでゲームをひとつだけ買った。

お金さえあればもっと楽しくなれると思っていた。

そして僕は気付いた。

必要なのはお金や時間じゃなかったって。

ゲームをやりたいと切に願ったあの気持ちだったって。

無くしてから気付いた。


ハイスコアガール(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)
押切 蓮介
スクウェア・エニックス (2012-02-25)