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なぜ1流の経営コンサルタントが必ずしも1流の起業家になれないのか。

起業論

以前、外資系の経営コンサルタントで働く友人とランチをしたときのお話。


「将来は起業したい。だから経営を勉強するためまずは経営コンサルタントという職業に就職したい」という人が大学時代に結構いた。

そして実際に優秀な人は外資系のコンサルタントに就職していった。

日本に数ある仕事の中で、職業に経営とつく仕事はこんな仕事くらいしかない。

なるほど、そういうキャリアがあるのかすごいなぁ。と思っていた。

そんで、以前DeNAの南場さん(マッキンゼー出身)が書いた不格好経営という本を読んでいたら、経営コンサルタントの経験はほんとの経営には何にも役にたたねぇワロタ、みたいなことがかいてあったので、あれっと思って考えてみた。

確かに、あんなになんとか仕事術とかなんとかシンキングとかいかにもこれがビジネスの秘訣でござい、みたいなスキルや経験を身につけて経営ノウハウの神髄なるものを有しているのであれば、それこそ自分で会社なんてやろうものなら右も左も総ナメにしてるはずだが、やっぱり我々がぱっと名前を思いつくような起業家や経営者をあげたときに、そういう人らの名前が出てくるかというとなかなか出て来ない。

南場さんが言うように、経営コンサルタントの経験はほんとの経営には何にも役にたたないものなのだろうか。役に立たないとしたらその理由は何だろう。

理由を少し考えてみた。


1.意思決定をするのは自分。仕事の発想が根本から違う。

経営コンサルタントがどんなお仕事をしているのか、Wikipediaを見てみると、「経営コンサルタント(けいえいコンサルタント)とは、企業などの経営についてコンサルティングを行うことを業とする者をいう」と書いてある。

実際に聞いてみると確かに、大企業が経営判断を下したり、意思決定するための根拠となるような様々な分析をして資料をつくったりしている仕事をしているらしい。

大きな会社になると、そうそう簡単に物事をすすめる事ができない。僕もサラリーマンをしていた時は企画資料とか報告レポートとか、そういう誰かに何かを報告したりするのをよくつくっていた記憶がある。

論理的でヴィジュアルも素晴らしく理路整然と作り込まれたレポートや企画、そして華やかなプレゼンテーションはビジネスマンのまさに醍醐味と言えるだろう。

ところが、実際に会社をつくってみて、ごく小さな規模の会社においてこれらのスキルはほぼ役に立たないということを思った。

例えば企画をつくるにしても、結局自分が最終決定者なので別にわざわざ根拠やデータに裏付けられた重鎮な資料をつくる必要がない。

極論、自分はこれはイケルと思って納得したらそれで終わりなのだ。なんとなくこうだろうということを誰が見ても理路整然に納得できるような資料をつくる必要はない。というか、自分の中で決めた事を誰かに説明して理解してもらうためにつくる資料というのは初期のスタートアップの中では最も無駄な時間のひとつだと思った。もちろん複数のステークホルダーが絡む大きな会社ではそういった資料をつくる能力や関係部署の根回しとは非常に大事だけど、スタートアップのような小さな規模の場合は強硬なリーダーシップの方が大事だ。トップがやると決めたらもうやるしかないのだ。
もちろん何かを提案する資料や資金調達の資料なんかをつくる必要があるかもしれないけれど、提案資料の場合、事実やロジックの積み重ねよりも商品やサービスが魅力的かの方が大事だし、資金調達をするにも資金供給側はいかに事業計画書というのが絵に描いた餅であることを身を持って経験しているので装飾華美な資料は必要ない。

「会社が小さかったころはゴキブリが出たらみんなですぐに叩き潰したが、会社が大きくなると「ゴキブリとはどういう生物かを研究し調査する」「ゴキブリを退治するためにどういう方法があるか検証する」「ゴキブリ退治するために実行委員会を設ける」といった手順を踏む。この間に3年間位かかりいつのまにがゴキブリだらけになり退治できなくなる。

とは、GEの元会長の言葉である。

初期のフェーズにおいてはもう、あれこれ深く考えて立ち止まるよりも、もう脊髄反射的にゴキブリを叩くことの方が重要である。



2.マーケットアプローチでは遅すぎる。かつニーズの本質から遠くなりがち。

ビジネスは突き詰める時間か金どっちかにリソースを投下するしかない。

早くやるか。たくさんお金を投下するか。それしかない。

そして、儲かるとわかったら、すぐに誰かがそれをやりはじめる。

だとしたら資本も何もない小さなスタートアップは、時間に先ばりするしかない。

まだ、誰もが見向きをしてないうちにそこに1点張りするしかないのだ。

特にネットの世界ではウィナー・テイクス・オールが常だ。

そうすると、マーケットアプローチ、単語が思いつかないので勝手につくったが、要は、どこどこにこういう市場があってこれくらい儲かりそうですよーっていうのがあってそれを分析云々してる時点では小さな会社がビジネスとして始めるには遅すぎるのだと思う。

GoogleもFacebookもTwitterも他社や市場を分析して生まれたものではない。創業者がこういうのがあったら世の中がもっとよくなるだろうな、というビジョンではじまったものだ。そして最初はそれがただのゴミなのか世界を変える革命だったのか判別がつかなかった。

まさに、「もし顧客に何を望むのかを聞いたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」というマーケティングの金言そのものである。


また、マーケット・アプローチではどうしても市場に先に目がいってしまい、そもそものニーズからどうしても遠くなってしまうような気がする。

「アメリカでネットオークションが流行ったから、まだない日本に持ってきたら成功間違いないなしww」

「これからネットは伸びる!普段買い物してる野菜や靴もネットで売れるに違いないw」

多分いろいろデータを集めていったら、こういうことに間違いなく結論がでる。実に魅力的だ。

でもそうやって入って行った市場の先で、本当にそのサービスにお金を落とす人の立場にたって何かがつくれるかというと少し遠い気がする。

正直、年収1億円でもなぜか辞めるとか言われてブイブイしてる人らが、数千円そこらのためにモニター前に張り付いてクリック連打して発狂してる姿や、靴とか野菜をネットで買って送料が高いんだよ!!とかぶち切れてTwitterでクレームかましてる姿ってあんまし想像できない。でもこれらのマーケットではこういう人らが一番のお客様である。

どんなビジネスにおいても大切なことは、お客さんである。お客さんがとても大事だ。お客様の気持ちにたてなければ、そこに市場や将来性が何の価値もうまない。

その価値観ギャップを埋めるのに、「これが儲かりそうだから」と「自分がこんなのあればいいと心の底から思った」では後者の方に俄然軍配があがる。そして、苦しい局面を支えてくれるのもやっぱり後者のマインドである。

3.自分が優秀であるかどうかはあんまり重要じゃない。

昔ブログにも書いたけど、サラリーマンと経営者の根本的な思考のベクトルは根本から違う。


経営コンサルタントはその中でもサラリーマンの極みみたいなポジションなので、いかに自分か有能であるか、そしてそのことを周囲に周知徹底させるかは、大変重要なことである。


企業のトップというのは自分が有能であるのにこした事はないのだが、それがマストではない。


自分が仕事をテキパキできるかどうかより、自分より優秀な人をたくさん集められるかの方が大事だし、


何よりもやっぱり「この人のためになんとかしてやるか」とたくさんの人に思ってもらうことの方がめちゃくちゃ大事だ。


あと、多くの人が「雑居ビルの3F」の恐ろしさを見落としがちだ。

会社をつくる、というのはつくった人間からするとそれこそ人生の集大成、一大イベントだが、

端から見ると、日本に数百万ある有形無形、魑魅魍魎の中小企業が1社増えたに過ぎない。

いかにトップや幹部が優秀であろうとそれだけでは会社は成り立たない。人が必要だ。

ただ、そういうときに怪しげな雑居ビルにある名も知れない会社に人をよぶことがどれだけ難しいことか。

そしてそんな得体の知れない会社にやってくる人間が、自分と同じ価値観や人生観を持っている可能性は限りなく、低い。

それはかつて自分が職を探していたときにそういう会社群をどういう目で見ていたかを振り返って考えればすぐにわかることだ。

そういう制約下の中で組織を一つの目標に向かって動かすというのは、大きな企業で動かすのとはまた違う難しさなのである。

結局のところ人を動かすのはロジックではなくパッションである。



以上、つらつらと書いてきたが、別に経営コンサルってイケてないよね、っていう気持ちは毛頭ない。
何事にも得手不得手というものがあり、そしてビジネスや会社というのは生もので、タイミングが何よりも大事だ。

必要な人やリソースを必要なタイミングで。これこそ経営の本質である。

組織が大きくなるに連れて、マネジメントの知識や経験が重要になっていくフェイズが必ずある。

これは未経験や知識のない人間には無理だ。絶対にうまくいかない。

日本の大成功しているベンチャー企業というのは、大変なビジョナリーを持った起業家が事業を起こし、ここぞというタイミングでそういう素晴らしい実績や能力を持った人を三顧の礼で迎え入れて、大成功している。

うちの会社もいつかはそういうフェイズになりたいものデス。

不格好経営―チームDeNAの挑戦