「どうして生まれてから大人になったときに照明さんになろうと思ったんだろう」って割りと本質的な問いだと思う。

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ネットで広瀬すずという人の発言が炎上していた。番組を見てないので詳しくはわからないけれど、要するにタイトルのような発言が職業軽視だろ、っていう理由かららしい。実際に軽視する意図があったかは知らないが、この発言というか一連の流れは、キャリアを考える上でとても本質的だなぁ、と僕は思った。


例えばもし、これが照明さんじゃなくて、医者とか弁護士とかいう職業だったらどうだろう。

「どうして生まれてから大人になったときに医者さんになろうと思ったんだろう」
「なんで自分の人生を人の命を救うことに懸けてるんだろう。」
「きっと大人になって年令を重ねるとともに本当に被告を・・・弁護するだけでいいの?」

みたいな発言をみたら、

「はぁ〜〜〜〜!? そりゃ医者になるのは人の命を救うために決まってるじゃん!!」
「ばーっかじゃねーーの? 日本は法治国家なんだから弁護士は必要不可欠な職業なの!」
「医者とか弁護士知らないのかよww」
「何を言っているのかよくわからないんですが」

みたいなコメントで、キチガイ扱いになると思う。

でも、本当にそうなんだろうか。

僕は医者とか弁護士という職業は正直好きではない。

だってそうじゃない?

医者とか弁護士にお世話になるときって自分の身体にトラブルが起きたときとか、家庭とか仕事でトラブルが起きたときにお世話になる職業でしょ?

言うてしまえば、彼らは病気とか裁判とか人の不幸につけこんで金をせびる卑しい職業じゃない?

不幸で金儲けする下賤な職業でしょ。だって仮に医者とか弁護士が営業に来たら嫌じゃない? なるべく関わらない方が健康でトラブルもない人生ってことでしょう。

でも、日本では大学の医学部とか法学部とかは難しいということになっていて
日本では高校とかのときに理系とか文系の一番頭のいい人はそういう進路に選ぶのだけど、その叡智を活かせば将来もしかしたら革新的な発明や発見をするかもしれなかったり、これからの国家や会社を担う官僚やビジネスマンになる可能性が高い人たちが、死にかけのジジイとかババァの相手に聴診器当てたり、あるいは犬も喰わない離婚の調停とかやって小銭を稼いで生涯を終えるのは、果たして正しい選択なのだろうかとさえ思う。

その点、照明さんとかは僕もどういう仕事かはあまりよくしらないけれど、常に人の晴れ舞台に立ち会って、人がスポットライトを浴びて輝いてる瞬間を見続けてるわけだから、楽しいのかもしれない。僕が知らないだけで、もしかすると給与とかもいいのかもしれない。

でも正直、照明さんについては、仕事がよくわからない。

医者とか弁護士はよく知ってるのに。

これはなんでかって考えると、医者とか弁護士は、その職業をテーマに取り扱った作品が多いからじゃないか、って思うんだ。

照明さんを主人公にしたドラマや漫画は僕は見たことも聞いたこともないけれど、医者や弁護士を主人公とした作品はごまんと知っている。

医者が難病に立ち向かって奇跡の手術をする話や、弁護士が無罪の被告のために奮闘して無罪を勝ち取る話は数えきれない。毎年ドラマで何かしらやっているのではないだろうか。


やっぱり医者とか弁護士という職業はわかりやすいんだよね。例えば僕がいるスタートアップの起業家なんていうのは、地方の人からすると想像すらつかないだろう。

起業家も東京にいれば、リスクをとった若者かもしれないけれど、これが島根とか鳥取だと、なんとかさんのところのちょっとおかしい無職の息子さんだろうね。

そういうテーマの話で作品なんかつくったって共感なんてできっこない。

其の点、医者とか弁護士とかってわかりやすいよね。

東京でも地方でも、やってる仕事は変わらないだろうし、

ヒト、助かる、ミンナウレシイ。オマエ無実、無罪ミンナウレシイ。

みたいなちょーわかりやすいロジックで、テレビでも漫画を読んでるそんなに社会を知らない人らでもわかりやすく理解してもらえる。

そりゃ毎回この職業をテーマにするわ。

これが、起業家とかのマニアックな職業だと全然おもしろくないし、売れないと思う。

牛丼食いながらスマフォでアナリティクス見てコンバージョンがどうのこうのブツブツひとりごといって眺めてるシーンとか、面白いか??面白くないっしょ??

そして、日本では医者や弁護士になりたい人はたくさんいるけれど、日本では起業したいという人は割りと少ない。


まぁ、何が言いたいかっていうと、キャリアの選択肢を選ぶような青年期までの時期に目にすることが多い、ドラマや漫画で登場する職業が比較的その人の人生の仕事をキメる上での意思決定に影響してるんじゃないの? つまり、あなたが小さい時読んだマンガやドラマで多くの場合職業の選択肢の幅が決まってしまうのでは??

ということ。



日本では人種や身分の差というものがなくて、父親や母親のような家族と同じ仕事をする、ていうのはだんだん減ってきている。

職業選択の自由が増えてきたのだ

ただ自分が知らない職業、その職業がどういうことにやりがいとかを感じるのかを知らない職業については、選びたくても選びようがない。

世の中にはそういう仕事がいっぱいある。僕はこの歳というか社会に出てからはじめて知った仕事や職業が初たくさんある。大人になって漫画とかドラマを見て初めてカッコイイなって思った仕事がたくさんある。そしてそれは自分が若いころに知らなければ選べなかった職業がいっぱいある。

もしかしたら小さいときにドラマを見て漫画を読んでワクワクしていたら僕は海上保安官や、競艇選手や、畜産業やエンバーマーや船乗りになってたかもしれない。

でも僕は、知らなかった。

何も考えずに、大学に行って、適当に就職して、流れで今に至る。

どうして生まれてから大人になったときにその仕事になろうと思ったんだろう、ってこたえられない。

それが応えられる職業、一致してるキャリアってどんな職業だってかっこいいと思う。

前述の照明さんだって、それが前述の常に人の晴れ舞台に立ち会って、人がスポットライトを浴びて輝いてる瞬間を見続けたい、っていうビジョンがあるならそれはめちゃかっこいい。

職業に貴賎はないというか、なぜなんのために自分がその仕事で働いているのか、って答えられる人っていうのはやっぱりかっこいい。別になぜそれをやってるのかって言われても、そりゃこうです、なんで?って答えて別に悪びれる必要もないと思う。

でもそれが応えられない、仕事なんてただ生活のためにやってる、好きでやってんじゃねーよブラック企業は死ね残業代払えクズとかってブツブツいってる人たちにはそうは映らなくて、あ? バカにしてんのか? みたいな感想になるわけで、それは悲しいキャリア感だよなぁ思ってしまうのでした。