キングダムに見る企業家にとって大切なこと。
キングダムというマンガがベンチャー界隈ですごく評判が良いと聞きつけたので、読んでみたら、マジでめっちゃおもろい。息抜きに繰り返し読んでたりする。繰り返し読むなんて久しくないマンガである。
歴史物は趣味が別れるけれども、横山三国志とか読んで楽しいと思えるのならキングダムもとても楽しいと思う。
とはいえ1巻から7巻あたりまではまるで少年ジャンプかよ、とかいうくらいのヒーローアクションものなので、いい年のおっさんには苦痛なんだけど、その後からだんだん面白くなってきて最新の32巻とか、もうしびれるよね。
昌文君の ぐふぅ とか見ると。いい味だしてるなぁこのおっさんって感じになる。
まぁ、何はともあれ、なんでこのマンガがこういうビジネスの世界で支持者が多いかって言うと、
ビジネスというのはつきつめてくと戦なんですよ。やっぱり。
左手では握手をしてるようで、右手では殴りあったり、あるときは二度と立ち上がれないくらいボコボコにしてやったり、相手の弱みにつけ込んで出し抜いたり、すべては勝つ、ということがすべてなんです。
でないと、生きていけないんです。戦いですから、勝つ人がいれば、負ける人がいるんです。
そして、三国志とかこういうキングダムの面白いところは、
たとえ数字上の規模では負けていても、将の覇気せまる勢いで押し勝ったり、軍師の奇策で逆転勝ちしたりと一筋縄ではいかない、ってところだと思うんだよね
ひとつの戦いをあとから振り返って、あーだこうだいうのはとても簡単で、ふりかえってみるとなんでそんなしょぼい間違いをしたんだろう、って好き勝手言えるのだけど、自分が当事者でその渦中、その瞬間瞬間で最適な決断を下す、しかも判断を誤れば自分の首が文字通り切られる、という環境で相手の一歩先を読んで決断していくのは、本当に胃が震えるほどプレッシャーだったのだと思います。
実際にビジネスをやってみるとよくわかります。アイディアとか考え自体は割と誰でもたどり着けるのだけど、それを「起こす」のがこれまた難しい。
はたから見てるとすごい簡単そうに見えたことが、いざ自分が決断をくだす立場になると今までとは違った景色や光景やリスクが見えてきてしまう。
あ、俺これ間違えてたら上野駅前で段ボールで寝ることになるわ。うまくいけばタワーマンションだけど。みたいな場面が来たときに、普通だったら絶対に間違えない選択肢を間違えない自信がまだ今の自分にはない。
そんで、キングダムなんかで展開される数十万の大軍がわずか数百のゲリラ部隊に翻弄されて、壊滅的な打撃を受けてしまう構図は、ビジネスの世界では破壊的イノベーションによる既存ビジネスの崩壊、いわゆるスタートアップが大企業を食うイノベーションのジレンマ的な現象と通ずるところがあるし、精鋭部隊軍団が名将に率いられた雑草軍団に完膚無きまでに打ちのめされたりと、まさに定石通りにいかないところにも、ビジネスに通じる妙がある。
自分も会社をつくって、少なからず組織を率いていかねばならない立場になったことで、将たる器やマインドについては特に考えさせられるところがあります。
もちろん、数人かそこらの組織のトップに求められる役割と、数百、数千、数十万軍隊のトップとでは、必要となるスキルやマインドも異なってくるのだとは思うけど、その辺りの将での成長の変化が主人公、信の成長とあわせてつぶさに見れるのがこのマンガの面白いところなのだなぁ、と思ったりするのですよ。
あと、戦の進め方も将によって変わってくるというのも面白いですよね。
キングダムの一節である将軍が「武将には二つの型があると思います。一つは"知略型"。もう一つは野生の直感で戦うような"本能型"」
というようなことを言うのですが、実際のビジネスの進め方もやっぱり将の型が如実にでます。
市場調査をして綿密分析と事業計画に基づく事業を展開して成功をおさめるタイプの企業家もいれば、時代のトレンドを機敏に感じ取って行動を起こす、山師的な展開で大成功をおさめるタイプだったりだとか、その人の型がビジネスのフィールドから進め方まで如実に反映されます。
キングダムの中でも、どちらが正しいかという答えが示されていないのと同じように、実際のビジネスでもどちらが正しいのはわかりません。
ただ、どちらの型であれ両者とも大事なのはやっぱり「タイミング」に対する考え方なんだろうな、と思います。
わずかな軍も、油断した背後の奇襲となれば致命傷をあたえることができますし、数万の大軍であっても相手にじっくり備えさせる時間を与えてしまったら、小さな城も落す事ができません。
ようは結局、戦もビジネスも突き詰めればタイミングなのです。
タイミングさえ見抜けば、それこそほんの小さな力、後から振り返ればなんだそんな簡単なことか、っていうくらいのきっかけで大勝をつかむ事ができてしまう。
でも、それが本当に難しいし、そしてだからこそ面白くもあるんですよね。
キングダム、これからも楽しみです。