Gunosyが挑む4つの前轍

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Gunosyが先日の大幅なリニューアルに加えてなんとテレビCMも放送しているらしい。

またGunosyのレビュー操作問題や、Gunosyのアクセス数減少に伴うGunosy失敗論を唱えるブログも話題を集めている。



ここ最近、スマートフォンやウェブサービスを主として急成長するベンチャー企業、いわゆるスタートアップとよばれる企業群が大きな資金調達をするなど注目を集めている。

別にこういうベンチャー企業を取り巻く環境が盛り上がるのは今に限ったことではない。

いわゆる過去のITバブルと呼ばれた頃にも、同じようにたくさんの企業が生まれ、膨大な資金を調達し、一部は今をときめく大企業となり、その一方で多くが散っていった。

当たり前だが、すべての事業がうまくいくわけではないし、そしてまた時代が変われば常識も変わる。

結局事業なんて、うまくいくかいかないかなんてやってみなければわからないのだ。

しかしながら我々は、歴史を、過去を学ぶことができる。だから、少しでも成功の可能性を高めるために。前轍から学ぶというのはとても重要だと思う。
(前轍・・・前に通った車のわだちから転じて前の人の失敗という意味)

Gunosyはそういう意味では、過去の前轍に真っ向から挑戦している、非常に勇敢な企業でありサービスである、と僕は思った。

ふと書いてみたくなったので、今日はそのGunosyが挑む4つの前轍に書いてみようと思う。


1.カテゴリ未成熟時のテレビCM出稿

潜在顧客というのは事業家にとって麻薬である。
自分たちのプロダクトやサービスはとても優れているのに、消費者のところへ届いていない。。
だから、多くの消費者にリーチすることができれば彼ら潜在顧客はドッと自分たちのプロダクトやサービスに押し寄せる。
もちろん、それは間違いではないと思う。だからこそこぞって企業は膨大な金額を払ってテレビCMに出稿をする、

実際にソーシャルゲームアプリではテレビCMで一気に駆け上がった事例もでてきた。
でも、それはあくまで、カテゴリとして多くのマジョリティに認識されている時点で、だと思う。

それを忘れて、安易にテレビCMの出稿は単に資本をドブに捨てるだけである。

例えば海外だと有名なのはPets.comの事例があるね。

Pets.com(2000)

(オンラインペット用品販売サービス:2000年のIPOで8250万ドルを調達するもその後9ヵ月で倒産。Macy’sのサンクスギビングパレードやスーパーボールでデカデカと広告を打ち散財したことで有名。)


A medley of Pets.com TV Commercials - YouTube


(そもそも56kbの通信回線全盛期の時代にペット用品を送料払ってディスカウントストアより高い値段を買う理由ってあるのか・・・)


国内でも、有名どころだと

jside.com(1999)

(コミュニティ ポータルサイト:大橋巨泉のCMで話題に。2001年2月、ジェイサイド・ドットコムは精算)


http://www.youtube.com/watch?v=J1OVQ-ihCPY

(何のサイトか全然わかんない)




最近のところだとロコンドとかサンサンとか。

ロコンド(2011)

(返品無料の靴の通販サイト 桁違いの資金調達と官報から判明したすさまじい赤字額が話題に)


ロコンド.jp CM 後悔爆破・殿様編(近藤正臣) - YouTube

(返品自由と言われても、履いて使ったら返品だめなんでしょう?ABCマートで試着して買います・・・)


SanSan(2013)

(名刺管理サービス eightが有名)


【TVCM公開中】 営業を強くする名刺管理 Sansan 「面識アリ」篇(30秒) 松重豊 野 ...

(そもそも、名刺管理サービスなんて言われても導入は会社が決めることだし、俺がこのCMみたところでどうすればいいんだ?)


こちらはまだ、どちらもぐんぐん成長している(らしい)けれど、ロコンドはテレビCMに関しては失敗だったって経営者の人が言っていたね。


それで、これが今回のグノシー

グノシー(2014)



グノシー ウルトラマンCM 「プレゼン編」 - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=5D5LU_ZH7xw


(・・・・・・うーん・・・・皆さんでご自由にコメントをどうぞ)



2.ベースとなるコンセプトの変更とミスマッチ

テレビCMに「たかが3分」とあるように」今回のアップデートでも強調された「3分で読める今日のニュースをあなたにお届け」というキーワードが出ているね。

でも当初のGunosyのコンセプトは「Gunosyはあなたの興味にあわせたニュース,記事を推薦してくれるパーソナルマガジン 」だった。

普段そのビジネスに関わってる人たちは、毎日そのことを考えてるので些細な変更のように見えても、いち消費者は普段からそんなこと考えているわけではないので、コンセプトの変更は想像以上に与える影響が大きいね。

それでも新しいユーザー獲得のために、大きくピボットをするの間違いではないと思う。

今回のグノシーのアップデートは、テレビCMをやってるところから見ても分かる通り、明らかにアーリー層ではなくてマジョリティ層を意識しているね。

でも、だとするとこの「3分で読める今日のニュースをあなたにお届け」ってコンセプトはどうなんだろうね。

ニュースなんて、気になったときに見るものだし、そもそも普通の人は忙しいから3分に圧縮できて便利!なんて思ってないんじゃないのだろうか?

いわゆるマジョリティ層の普通の人にとって、ヤフーニュースとかツイッターでたまに見る以上に、ニュースをまとめ読みする理由ってあるのかな?

率直に僕はそこが疑問に思ったよ。


3.フォロワー戦略の矛盾

前の記事にも書いたけれど、今回のアップデートで多くの人が思ったのは「え?スマートニュースじゃん」ってことだと思う。

マーケティングではそのカテゴリで1番手になることはとても大事。どんな人でも日本で一番高い山の名前は知っているけれど、2番めはみんな知らない。

それでもほぼ同じUIとコンセプトを出してきたということは、これはスマートニュースの方がUIが優れている、という証になってしまったし、自分たちはフォロワーであるという明確な意思表示だね。実際にスマートニュースとは2倍くらいダウンロード数の差があるみたいだね。

フォロワー戦略というのは、あれだ「リーダー企業やチャレンジャー企業の模倣をしながら経営資源の蓄積を図っている企業が採用している戦略」だね。

例えばユニクロなんかが多額の広告費を投じて「サラファイン」とよばれる女性用機能性肌着の新マーケットをつくってくれたおかげで、イトーヨーカ堂の「ボディクーラー」
イオンの「クーリッシュファクト」という後追いの企業が類似製品をだしたときに、広告費が少なくても、「あー ユニクロがやってたあれみたいなやつかぁ こっちでいいかぁ」みたいな感じで消費者が買ってくれたり、メディアとかでも同列に扱われて、一緒に露出される機会も増えるまぁコバンザメ的な感じだね。



でも、だとしたらフォロワー側が、多額の予算をかけてテレビCMをガンガン出してきたらダメなんじゃないかな。。。それも、アプリのような無料のスイッチングコストが低いもので。。。



実際僕は、アップデートでスマートニュースっぽいって話題になったということで、スマートニュース使ってなかったんだけどスマートニュースインストールして、やっぱりこっちが使いやすかったからこっちを使うようになったわ。

それにスマートニュースもいま、広告出稿たくさんしてるみたいで、スマートニュースが「1分でニュースをまとめよみ」とか出してて笑えて、パクリ側のグノシーが頑張ってお金を使って耕したのを、全部本家側のスマートニュースが収穫してもっていくという悲惨な姿が垣間見れたよ。



4 "be evil”なマネタイズ

"be evil”とはGoogleの社是にも書いてある。Don’t be evil(邪悪になるな)とは反対な意味ね。

Googleは今となっては圧倒的なポジションでもう、世界のインターネットを牛耳るといっても過言ではないのだけれども、

素晴らしいなって思うのがDon’t be evil(邪悪になるな)という創業者の社是がなんだかんだで守られているところ。

だから、圧倒的なトラフィックがあるはずのトップページには創業以来ずっと広告も何もないし、「実は自然検索順位もコンテンツの有用性ではなくて、リスティング広告の貢ぎ金額で変わるのねん。ぐへへ。」みたいなことはしない。

be evilであることが、自分たちのビジネスにもたらす影響をしっているから、他の検索エンジンが安直なマネタイズに手を出して、轟沈していくなか、
Googleは検索エンジンの激しい競争を生き抜き最後には膨大な富を手に入れた。

だから、Gunosyの今回のアップデートで一番ビビったのが、”be evil”なマネタイズだった。

記事のひとつのように見せかけて、しれっと記事でもなんでもない広告単価の高いクレジットカードやサラ金や育毛剤なんかの怪しげな広告をあたかも記事のようにして差し込んでくるのだ。

一応、「Gunosyはあなたの興味にあわせたニュース,記事を推薦してくれるパーソナルマガジン 」 というコンセプトとして、世に生まれていて僕はその認識で使っているのでこれには、ものすごい懐疑心をいだいてしまって、これが原因でグノシーは僕のスマフォから消えた。

レコメンドを売りにしていたところが、レコメンドの精度ならまだしも、そもそもの思想を疑われてしまったらもう終わりだと思う。

それにグノシーはメディアではなくて、あくまでキュレーションをしている立場である。

メディア側が四苦八苦してコンテンツをつくって運営を行っている中、それにフリーライドして収益を上げているのは決して良い顔はしないだろうね。




まぁ、つらつらと書いてきたけれど、僕は別にグノシー嫌いなわけではなくて、メール版毎日つかってるし、ブログもグノシーからすごいグノシー砲があるから、好きなプロダクトなんだよね。

それにグノシーは外部から膨大な資本を入れてるし、経営陣も優秀だ(ろう)から、どう考えても成功するんだ(ろう)けど、もっとうまくやれたら別の可能性もあったんじゃないか、というところについては誰もわかんないし、証明のしようもないんだよね。

手堅く出資企業とかに吸収合併されるような感じで「やっぱりねー。」くらいで終わるのか、「えっ!? ええー!!」って何度も度肝を抜かれるような心ときめく結果になるのかさ。

わかんないよね。


でもただ、ひとつ確かなのは前のブログ記事に書いたけれど、あのとき僕がはじめてみた最初のグノシーは最高にクールなプロダクトで、

スタートアップ学校の中にやってきたとびきりのかわいさを持ったマドンナだったということ。

魅力的な彼女はあっという間に、周りを虜にさせて、

じぇじぇじぇとか何かを言ったかはしらないけれど、おらさ東京いってアイドルになるだ と

卒業後東京に行ったはいいものの、音信不通になって結局六本木のキャバではたらいてるとかの友人からの話を最後に消息不明になってしまって、記憶からも消え去ったあと

しばらくして、久しぶりに地元にかえってきたら、根本が黒いプリン頭とよれよれになったユニクロの服をきて、子供片手にジャスコにワンボックスカーでどことなく儚げにカート押してるくたびれた彼女の姿を偶然見てしまったような、残念なきもち、そんなきもちにはなりたくないよね。

がんばれグノシー。


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