会社をつくって1年間たって大事だと思った3つのこと

会社をなんとか1年間やっていくことができました。
まだまだ苦しいですが、なんとなく収益の方向性や今後目指していく方向性も目処がついてきたのかなというところです。


会社創業後1年間でつぶれる確率は4割というらしく、そういう意味でいうとなんとか最初の4割に入らなかったという感じですが、
一応ベンチャーと言って資本を外部から入れてるには、ギリギリまでレバレッジを効かせてスピード重視で挑戦しなければ行けない訳で、これはある意味自分が勝負しなかった結果とも言えるので、ダメな結果なんだと思います。統括としては、「ぬるすぎる」と思ってます。リスクを取らなさすぎです。ダメダメすぎて泣きそうです。


振り返っていろいろ気づいたことや直さないといけないところが100個くらいあってメモしているのですが、その中でも特にこれは大事だなぁと思ったことを3つほどあげてみたいと思います。


・サラリーマンと経営者の根本的な思考のベクトルの違いについてきちんと意識する。
 日本では多くの経営者が厳しいサラリーマン時代の下積みを経て経営者となるといったシナリオが周知されているせいか、サラリーマンとしての経験上の延長に起業や経営といったものが存在すると思われがちです。もちろんビジネスのスキルや経験といったものは大事ですが、そもそもこの両者には決して相容れない決定的な思考ベクトルの違いがあります。それは時間と金と仕事の関係です。

サラリーマンというのは基本的に自分の時間あたりの作業単価を上げるベクトルで仕事というものを捉えます。つまり、お金を稼ごうと思ったら「一生懸命がんばる」ことと、「資格を取ること」が大事になります。一生懸命頑張って自分の高い評価をもらうこと、そして資格を取る事によって時間あたりの作業の質を向上させること以外に報酬を増やすことはできないからです。そしてリソースとして投資するのは時間です。

一方、経営者の思考ベクトルはまったく異なります。経営者は自分の時間あたりの作業単価を下げるベクトルで仕事というものを捉えるのです。つまり、お金を稼ごうと思ったら「(人に)一生懸命頑張ってもらう。」ことと「規格をつくる」ことが大事になります。自分にかわって知識やスキルのある人に代わりに仕事をやってもらう。また、作業を誰がやっても同じように効率よく進めていく事ができるように様々な規格・ルールをつくっていくことが自らの報酬を増やすことにつながります。
そしてこの場合リソースとして投資するのは金になります。

わかりやすく例で説明すると、
サラリーマンは1時間あたり時給が高くなるように働く、今まで時給1500円だった人間が、一生懸命がんばって作業効率をあげる、資格をとって付加価値を加える、ことによって時給が3000円にあがるというのが、基本的なプロセスなのに対して、

経営者は1時間当たり時給1500円分の仕事ができる人間を3人集めてきて4500円を投資して、9000円の価値を持つ製品を生み出す。
そして今度は時給1000円の能力の人でも、同じ事ができるように規格をつくっていくというプロセスになります。


この両者の違いは決定的です。それは「スケールアウト」という点で如実に現れます。
サラリーマン的な思考ベクトルでは、自らの能力が収益の限界になるため、どんなに頑張っても限界があります。人が1人あたりにできる仕事量には限界があるからです。
ただし、投下するのは時間であるため、どんなにうまくいかなかったとしても失うのは時間だけです。

一方経営者的思考ベクトル的ではスケールアウトが可能です。自分1人の時間や能力は有限でも、他人の時間や能力は無限にあるからです。資本のレバレッジを効かせれば、拡大していくことができます。ただし、金を投下することになるため、うまく行かなかった場合、金を失うことになります。

これは当たり前といえば当たり前の話ですが、慣れないうちはどうしてもこの思考ベクトルがごっちゃになってしまいがちになります。

会社をつくって事業を大きくしたいというからには徹底的に後者の思考ベクトルで物事を考えるようにしなくてはいけません。

だから起業して会社をつくった以上、仕事面においてとにかく自分が苦労しよう、努力しよう、という方向はなるべく避けていかなければなりません。経営者が考えるべきことはどうしたら自分が苦労しないようになるかということです。そしてそのことが結局は巡り巡って会社全体の利益につながります。



・起業家は成長しない。
よく起業を通じて成長する、といいますが、起業家ほど成長とはほど遠い職業はこの世にないんじゃないかと思います。
若くして起業することのデメリットとして、先輩や上司という身近なメンターを失うということがあります。
先輩や上司は、仕事を進めていく上で嫌な思いをすることもありますが、それでもやはり自分の改悪い癖や悪い習慣を指摘してくれる貴重なメンターであります。
起業をするということはこういう身近なメンターの下で自分を改善する機会を失うということでもあります。
起業をした当初は基本的に人も足りないし、管理職といった区分やフィードバックという概念がありません。自ら悪い癖や習慣に気がついて、自らを律していく以外に、変えていく方法がないのです。世の中にはほめてくれる人こそ多く有れ、しかってくれる人というのはほとんどいません。
また、最初に述べた通り基本的に経営者は自らが仕事をしないベクトルに進むため、実務レベルでのスキルや知識の向上は思った以上に大事ではありません。結局自分ができないことの方が多くなっていきます。ランニングやトライアスロンが好きな経営者は多いですが、最近何となくその理由がわかった気がします。これらのスポーツは究極は自分と向き合うことが根底にあるスポーツだからです。自らを律することのできる自律心を持った経営者しか成功はできません。


・会社として何をストックしていくか決める。
 ストックという概念は会社経営にとって死ぬほど大事です。会社として何を積み上げていくか、というのが会社経営の本質的な課題であると思います。
売上げや利益といった経営数値は大事ですが、その背後でストックされていく見えない大切なものはたくさんあります。
例えば技術力、あるいは人材チーム、顧客基盤、ノウハウ、知的財産、収益構造etc...
経営数値はこれらのストックが数字として形を変えたものです。
ストックについて考えるというのはこれはこの会社に価値があるとしたらそれはいったい何か?何がこの会社の価値たらしめるのかという問いでもあります。
もちろん全ての領域でストックしていくのにこした事はないですが、リソースが少ない段階では自分の会社が中でもどこのストックにエッジがたっているかまたはたたせていくかを常に意識する必要があります。
そしてここは割に会わないなと思った部分は別のストックに向けるべく思い切ってリソースを削る必要があります。
この辺りは創業者の仕事に対するバックグラウンドや、価値観がかなり反映されるところだと思っています。自分が今までの仕事の中で何が結果として利益につながったか、あるいは何に苦労したかという原体験がこのあたりの会社のビジネス設計にかなり反映されて落とし込まれるからです。
経営者は常に会社がこのまま進んでいくと積み上がっていくものは何かということを意識しておく必要があります。そしてうちの会社はこれをストックしていくんだぞ、と確固たる指針を示すことが経営者としてのリーダーシップの本質ではないかと思うのです。



とりあえずざくっとまとめてみました。おかしいところや追加事項もあると思うので、また気が向いたら直します。

この1年間で、成長したなぁと思う事はあんまりないですが、物事の考え方や見方についてはずいぶん変わったなと思います。

今期からはもっと日々に緊張感を持って、生きていこうと思います。