中二病でも起業がしたい!
ベンチャーや。兵どもが夢の跡。僕が学生ベンチャーを応援しない理由(長文) - UEI shi3zの日記 http://d.hatena.ne.jp/shi3z/20121221/1356061925
なんかFacebookにいっぱいポストされていたので、読んでみたらなかなか考えさせられる文章だった。
例にもれず流行にのって会社を興した起業家の端くれとしては、何らかの意思表示をしておかねばならないだろうと思うし、考えたことをモヤモヤ脳内でさせておくよりは文章として吐き出しておいた方が脳のメモリーを食わなくて済む。
なんだかこのブログに書かれている事ってよくこのブログにつっかかってくる、kawangoという人もどうも同じく似たようなこと言っていたなぁ、と思っていたら、その下で働いていた人なのか。
@kawango38「まだ、お前にはこのステージは早すぎるだろうよぃ」 起業家「くっ・・・」 - Togetter http://togetter.com/li/370816
どうりで感性が似ているはずだわ。
ブログの内容としては全般的にあってると思う。
まず最初に、俺も学生ベンチャーは基本的にやるべきではないかなと思うわ。
その理由としては、概して学生ベンチャーは市場の見極め力が圧倒的に弱いから、どうしても市場が限定されてしまう、というのがある。
人生経験が少ない分、世にある様々なビジネスの商慣習に触れることが少ないから、どうしても自らの実生活からビジネスアイディアを着想せざるをえない。
だから結局、「ぼくのかんがえたさいきょうにべんりなさーびす」の域から抜け出せない。
ただしそれが強みに働く市場もある。
例えば
学生へのアプローチで優位に立ちやすい教育事業、低コストでの参入が可能な人材紹介ビジネス、学生の安価な労働力を投下できる広告・旅行代理店事業あたりは学生ベンチャーが食って行ける可能性が多いにある。
しかし、これらのビジネスは突き詰めると単純労働集約型ビジネスで人材の摩耗をエンジンとして成り立つビジネスだから、ある程度年次が立ち高コスト体制になると会社が傾いて消える。新陳代謝が激しい。
もうひとつ、最新鋭の技術に基づく技術立脚型ベンチャーは、大学の本分が人類の叡智を拡張するフロンティアである以上、学生ベンチャーでも成功しやすいと思うのだけれど、悲しいかな、
まだまだ日本では視野の狭い大学や圧倒的権力をもつ偏屈教授によってなかなか日の目をみないのだろう。
あと社会の不条理さを知らないのも学生ベンチャーの辛いところだ。社会にはまったく意味がわからない不条理なシステムや価値観が多数存在している。
それを、おかしいと指摘して切り捨てるのは簡単だが、得てして世の中はそういう不条理なシステムや価値観にガチガチに染まった人が大きな決定権や大金を稼いでいたりする。
そういう人たちが何をしたら喜んでくれるのか、ということを肌感で経験しておかないと、儲かる話も儲からなくなってしまう。
これは、やっぱり不条理な環境化で働く社畜経験がないと見えてこない。
というわけで、多少の社会人経験があった方が起業する上では有利なのは間違いない。
社会にでて、いろいろなビジネスの裏側を知る、そして社畜の不条理さを経験しておく。これが起業して成功するためには重要だ。
ただし、年次を重ねてソウルジェムを汚しすぎてしまうと、裏側が表側に、不条理が正論へと変わるので、染まりきらない若いうちに飛び出すことも大事だ。
単に起業するのが目的なら別に何も資格もいらないから、学生でもつくってしまえばいいけど、実際つくったところで金がない社長なんてまったくモテないし、
わかる人は上のようなのビジネスの仕組みをしってるから、ベンチャー企業なんちゃってビジネス語って経営知ってますみたいなのは、はいはい意識高い高ーいで終わってしまうから就活のネタとしても使えない。これは辛い。
この点において学生ベンチャーをお勧めしないのはまったくの同意だ。ベンチャー企業で働いて学生のうちから、社会経験を積みました!というのも、社会の荒波にもまれているベンチャー企業創業者からすると、温室育ちの学生を酷使するなんて朝飯前みたいなものなので、 40代無職おっさんとつきあっている女子高生が「私は彼と出会って本当の愛を知った。」と言ってるようなくらいの悲壮感漂うので、あんまりおすすめしない。
次にシードマネーについて。
正直、数百万のシードマネーというのは評価が分かれると思う。
ただ、ひとつ確実に言えるのはこれから新規事業という人生をかけた一大勝負に出ようとしているのにいい歳して数百万程度の金をかき集められないくらいのだとしたら、
それはもうその人が何か欠陥を持ってるがゆえの信用の乏しさなので、仮にシードマネーを入れたとしても周りに不幸をまき散らすだけ。絶対に辞めるべきだと思う。
それなりに能力があってかつ人間的に正しく生きていれば30前後ともなれば、この国では労も無く必ずかき集められる金が数百万という金だ。
これが大金だと思えるようなら、その人は会社をつくる器ではないということだ。金なんてあるとこには腐る程ある。
だってこんなに毎日至る所で注意喚起が叫ばれているオレオレ詐欺ですら、未だに毎日毎日3500万円以上が被害にあっているというのに、
成功するする詐欺で金を集めれない人間なんて、最初から事業なんてやるべきではないんじゃないか?
じゃあ、事業資金としては瞬間蒸発する数百万円のシードマネーが生きる場合は何なのかというと、「若さへのレバレッジ」が大きいと思う。
20代前半であれば、まだ無茶ができる。守るものもなければ、失うものもない。ソファーで寝て、毎日カップラーメンをすすり毎月10万円以下の生活で1年中戦える。
これが30代も半ばになっていると、生活環境の変化に耐えられない。どうしてもランニングコストが押さえられない。というか会社辞めた後の住民税の支払いでだいたい涙を流す。節制された若さへの金は最大限に活きるのだ。
またシードマネーの資本を入れるということは会社に成長の宿命を背負わせるということだ。この会社は将来有形無形のオーナー企業で終わるつもりはない、という明確な社会への意思表示だ。
このスクリーニング機能は、会社の知名度向上や、人材獲得促進、信用力向上というい金では買えない目に見えない価値を付与する。
そしてまた無責任なベンチャー賛美論があふれる世の中で、同じ船にのって同じリスクを追って同じ方向を目指人間からの知見や監査というのは、若さ故の経験不足をカバーする上でとても重要だ。
もちろん資本政策をきちんと理解して上でないと、会社が始まった瞬間、終わった会社というのも存在してしまうので、この点においては注意が必要だけれども。
僕は短い社会人生活ではあったがたまたま金融機関でクリティカルにこの部分を学ぶことができて、一応それなりに理解があった、というのもこれもまたひとつの何か運命なんだろうな、と思っている。
最後に起業家、経営者として必要なスキルについて。
ブログでは、「まず一流のサラリーマンを目指した方がいいよ。それが起業のスタートラインだから」と結ばれているが、
これは間違いでもないし、正解でもないと思う。
結論は、「正しい答えなんてない。」だ。
起業・創業・独立・開業・設立、新しく会社を興すにはどれも似たような概念だが、全く異なる。
同じ経営者であっても、サラリーマン社長と創業社長は求められる能力が全く違う。
トップの数だけ、事例が存在する。成功は常に不可逆だ。再現などできっこない。
創業者の才能や手腕が物を言うときもあれば、時流の流れが全てを飲み込んでしまうときもある。
われわれは起きた事象に後付けでそれっぽい解釈をしてるに過ぎない。
技術や経験だって、必ずしも必要というわけではない。技術を突き詰めるのと、それを金にするスキルはまったくの別物だ。
例えばマクドナルドはレイ・クロックのフランチャイズ展開によって、世界最大の外食産業へとのし上がった。
彼は料理人ではなかったが、ビジネスの本質を見抜き、キッチンのシステム化というところにこのビジネスの成功要因を見抜いたのだ。
もし彼が、料理人としての経験やスキルを有して、マクドナルド兄弟のポテトに感動して、俺もこんなポテトをつくれるように頑張ろう、と包丁をふるっていたら、
そこに今のマクドナルドはない。
そう、正しい答えがないから、ビジネスはビジネスたるのだ。
そこにさも普遍的な成功要因があるかのように語るのは、成功者からの参入障壁だ。
「スタートアップとか流行ってるし、オレもそこそこ経験詰んだし調子のって会社でもやろうかなって思ったけど、会社経営ってこえーわ、ひえーっ クワバラクワバラ いまの安い給料でも良いんでもっともっと農奴のようにこき使ってください!!!調子のってすんませんでした!!!」
あたりへの着地点が一番経営者の利益を最大化するのだから、それは最も合理的であるというのはわかるのだけれどね。
でもさ、どんなビジネスや起業家だって、はじまりはみんな中2病なんだよ。
黒歴史ノート(事業計画書)をにやにやしながらつくって
「(既得権益は)時代の波に抱かれて消えろ!!」
とかやらないと始まらないんだよ。
もちろん厳しい現実の前にひとり、またひとりと妄想から目が覚めて脱落していくのは、否定しようもない事実だけど、
そういう中2病を発症しちゃった起業家がいて、それを真に受けちゃった投資家がいて、そしてまたそれを慕ってしまった社員がいて、みんなで中2病やって、それであるときほんとに上場基準境界線を超えちゃうのが起業なんだよ。
どんな起業家やビジネスだって、そうやってはじまってきたのに、それを多少現実が見えてきた元中2病が、ばっさりと切ってあざ笑ってしまうのはちょっと寂しいな。
僕だってまだ全然うまくいってないし、これから厳しい現実に直面して、現実は甘くない、って言い始めるかはわからないけど、やっぱりはじまりのときの気持ちはずっと大切にしたいな。
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